AIを用いて良品のバラツキをより柔軟に処理

良品のバラツキがゼロならば、「良品と同じかどうか」を検査するのが最も簡単で確実な検査です。ただ必ず良品にもバラツキがあります。
これらのバラツキをAI(ディープラーニング)で学習し、「良品と同じかどうか」では吸収しきれなかった良品バラツキを柔軟に処理して、良品率の改善を実現したのが、新バージョンFIS-200DLです。

従来型検査手法は良品のバラツキに統計処理で対応

良品のバラツキに対し、統計処理により良品の幅を持たせ、バラツキが大きなところは緩く、小さなところは厳しく検査するアルゴリズムが、従来型FIS-200の比較検査です。
この方法は、製品精度が高くバラツキが小さな対象物には非常に有効に機能するため、10年以上にわたり精密部品を中心に多数採用されてきました。

一方で、良品バラツキに対する許容度が小さく良品率が低めになる、バラツキが大きい部位においては細かい欠陥が検出できないという問題がありました。

2つのAI外観検査アルゴリズム

AI比較検査

AI比較検査(アノマリー検査)は、良品のバラツキをAI(ディープラーニング)で学習させることにより、より柔軟に良品バラツキに対応するアルゴリズムです。

良品のバラツキのみを学習対象とするため、学習量が少なくて済み、また余分な学習をしないため、必要以上に許容幅が広がらないという利点があります。

従来の比較検査に比べ、

  • 大きく歩留まりが改善する
  • バラツキが大きい部位でも細かい欠陥が検出できるようになる
  • 良品バラツキが大きすぎて検査できなかった対象物にも適用可能性を広げる

といったメリットがあります。

AI欠陥検出

比較検査/AI比較検査の弱点は、大きな対象物や立体物など分割撮像が必要な場合、その分割視野ごとに良品を学習させる必要がある点です。

たとえば1視野3分で設定できたとしても、10視野なら30分、100視野なら5時間かかってしまいます。また、データ量が多くなるため、操作レスポンスも低下します。そのため日々の運用に耐えられる検査装置にはなりません。

AI欠陥検出(セマンティックセグメンテーション)は、「欠陥」をAI(ディープラーニング)で学習させることにより定義し、対象画像に「欠陥」がないことを検査します。

「欠陥」は視野共通に定義できるため、全視野共通の品種データ、さらには品種共通の品種データを実現し、検査装置の運用性を大きく改善します。ただし検査の確実性という点では比較検査/AI比較検査に劣ります。

AI外観検査センサFIS-200DLの検査実例

AI外観検査センサFIS-200DLと他社AI外観検査との違い

実ラインでの評価・展開が容易

FIS-200DLは実績のある従来型外観検査センサFIS-200に対するAI機能拡張版です。カメラとの接続、搬送設備との信号授受などの機能は実装済みです。

よって検討段階でも実ラインにてAI機能を評価することが可能ですし、オフラインでAI機能の評価を行った後に実ラインに展開するのも容易です。

現在、FIS-100ユーザーの数社が良品率改善を目的として数千枚レベルの良品画像を集めて評価を開始しています。すでに従来型の「比較検査」で実ラインで稼働中、そのため容易に画像を集めることができ、順調に評価が進んでいます。

コストパフォーマンス

FIS-200DLの初期費用は約330万円~(AI対応外観検査コントローラー+2Mカメラ1台)です。毎月の使用料は発生しません。

また検査する製品によっては従来型の比較検査で十分な場合も少なくありません。AI機能を搭載しないバージョンは約175万円~(外観検査コントローラー+2Mカメラ1台)です。

商用AI(HALCON)を使用

FIS-200DLはオープンソースのAIではなく、商用のAI(HALCONのディープラーニング機能)を用いています。将来にわたりAI機能の速度強化、最新ハードウェアのサポートなどが期待できます。

弊社はAIがより使いやすくなるよう改善を進めます。