AI時代のソフトウェア開発(第2回) AIにコードを書かせる前に、設計資産を作る
AIでコードを書くこと自体は、これから当たり前になっていくでしょう。
しかし、20年以上外観検査ソフトウェアを開発してきた立場からすると、本当に価値があるのはコードそのものではありません。
現場で積み重ねてきた「なぜその設計になったのか」という経験です。
ソースコードは資産でもあり、負債でもある
私たちは20年以上にわたり、外観検査ソフトウェアを開発してきました。
その結果、膨大なソースコードがあります。
もちろん、その中には今では古くなった実装もあります。
一方で、数え切れない現場で試行錯誤しながら磨き上げられたノウハウも詰まっています。
例えば、
- なぜこの処理順になっているのか
- なぜこの例外処理が必要なのか
- なぜこのアルゴリズムを選択したのか
- なぜこのタイミングで設備と通信するのか
こうした理由は、ソースコードを読むだけではなかなか理解できません。
ソースコードは「どう実装したか」は教えてくれますが、「なぜそう設計したのか」までは語ってくれないのです。
AIに渡したいのはコードではなく設計思想
そこで現在取り組んでいるのが、既存ソフトウェアから設計思想を抽出する作業です。
例えば、
- 画像取得
- 位置決め
- 欠陥検出
- 判定
- 結果管理
- 設備制御
といった機能を、単なるプログラムとしてではなく、
「この機能は何を目的として存在するのか」
というレベルまで整理し、Markdown形式のドキュメントとして蓄積しています。
するとAIは、その設計情報を理解したうえでコードを生成できるようになります。
AIは経験を継承する道具になる
外観検査の世界では、「現場で10年かけて学んだこと」が数多くあります。
例えば、
- 照明の当て方
- 位置決めの考え方
- 検査順序
- 例外処理
- 設備との連携方法
こうした経験は、本来であればベテラン技術者だけが持つ暗黙知でした。
しかし、設計資産として整理し、それをAIと組み合わせることで、その経験を次世代へ受け継ぐことができます。
AIは人間の代わりになる存在ではなく、
人間が積み重ねてきた技術を再利用し、さらに発展させるための道具になり始めています。
これからの競争力は「資産化」にある
AIコーディングが普及すると、コードを書くスピードの差は小さくなっていくでしょう。
そのとき競争力になるのは、
どれだけ質の高い設計資産を持っているか
です。
長年の経験を整理し、誰でも利用できる知識として残す。
それが、新しいソフトウェア開発の土台になると考えています。
オービットでも現在、これまで培ってきた外観検査技術を一つひとつ整理し、AI時代に適した形へ再構築しています。
ソフトウェアは一度作って終わりではありません。長年にわたって現場で育てられた技術やノウハウを、AIとともに次の世代へ引き継いでいくことも、これからの開発の重要な役割だと考えています。

