KEYENCE VJシリーズ
KEYENCEのGigEカメラ・照明「VJシリーズ」のマルチスペクトル照明タイプを評価および弊社外観検査システムへの組み込みのために購入しました。
現在、組み込み作業が佳境です。
これは「カメラと照明を一体化して制御し、より検査に適した画像を取得できるようにするもの」であり、従来のカメラはカメラメーカー、照明は照明メーカーのものを組み合わせて使用するという「常識」を覆すものです。
照明の分割点灯はいくつかの照明メーカーからも提供されています。「1枚撮像して照明を切り替えて次の撮像」を行う点は同じなのですが、「1枚の撮像」=「1枚の露光+転送」であるために、30fpsのカメラで8方向切り替えを行うと8/30秒=270ms程度「静止している」必要があります。一方、このシステムではカメラにバッファを持たせておいて、照明を切り替えながら8回露光してから転送します。露光時間は1ms程度のオーダーですから、8ms静止していればよいことになります(位置補正する機能もあるため、完全静止の必要もない)。結果として、このシステムでは照明が切り替わっているのが目視ではよくわかりません。
実際のシステムでは、高速化のために露光中だけ静止して、対象物の移送中に転送&検査を行います。静止時間は何もできないために、装置の処理能力に著しい差が出ることになります。
そもそも、なぜ照明を切り替える必要があるのかです。欠陥には大きく2種類存在し、表面が形状変化して反射光の方向が変わる欠陥と表面が色変化する(散乱波長が変わる)欠陥が存在します。
後者は光源からの直接反射光が少ない状態で波長の変化=色の変化を検査します。色ごと=波長ごとの光量の変化を見るイメージです。
一方、前者は表面の傾きと光源の方向が「いい具合」になったときだけ反射する光量が増えることにより「白く」見えることを検査します。表面の傾きの方向はわからないため、手を使って「対象物の傾きを変えながら」検査する必要が出てきます。対象物の傾きを変える代わりに光源の方向を変えれば同様の効果が得られます。
すなわち、あらゆる欠陥に対応するためには、波長を変えながら光量の変化を観察すること、光源の方向を変えながら光量の変化を観察することが必要になります。
それを形にしたのがKEYENCEのVJシリーズになります。
・マルチスペクトル照明タイプは、8波長の照明切り替え or 4方向の照明切り替えの2モード切替
・LumiTrax照明タイプは、8方向の照明切り替え
が可能です。
弊社としては「とりあえず4方向でも形状欠陥は見えるはず。赤外から紫外まで撮像できる環境は魅力」という判断で、マルチスペクトル照明タイプを購入し、いつでも実験できる環境を準備しました。現時点でですが、時間が経過した金属表面のキズ(汚れとキズが区別できない)などに対して画期的な効果が得られることがわかっています。
問題は初期コストが高くなることかと思います。しかしながら従来は検査ステージを多段に準備して、たくさんのカメラ、たくさんの照明器を準備しなければいけなかったことを考えれば、システム全体としては初期コストを抑える効果が期待されます。また前述のように装置の処理速度をあげる効果も期待できるため、運用効果も大きくできます。
このシステムは基本的に社内に常設しており、ゆっくり触っていただくことが可能です。