外観検査自動化は「無理ゲー」であり「くそゲー」

画像センシング展のセミナーでもお話ししましたが、私は長年この業界にいて、最近ますます強く思うことがあります。

それは、

外観検査の自動化は、本質的に「無理ゲー」であり、「くそゲー」である。

ということです。

もちろん、これは技術者を否定する話ではありません。

むしろ逆です。

優秀なエンジニアが集まっても苦労するのは、技術力が足りないからではなく、テーマそのものが難しいからです。


壁① コストの壁

外観検査は品質保証のために必要な工程です。

しかし、多くの場合、

製品そのものの付加価値を直接生み出す工程ではありません。

そのため企業から見れば、

  • 原価低減の対象
  • できれば安く済ませたい工程

になります。

一方で、自動化しようとすると、

  • 設備費
  • 開発費
  • 調整費
  • 保守費
  • 運用費

が発生します。

つまり、

かけられるコストと、必要なコストが噛み合わない。

ここに最初の壁があります。


壁② 多様性の壁

外観検査の対象は実に多様です。

  • 品種が多い
  • ワーク形状が違う
  • 材質が違う
  • 色が違う
  • 照明条件が違う

そして何より、

一品一様です。

ある現場で成功した方法が、そのまま別の現場で使えることはほとんどありません。

結果として、

  • 個別最適の積み上げ
  • ノウハウの属人化
  • 横展開できない

という状況になります。

ソフトウェア業界で言えば、毎回ゼロから作り直しているようなものです。


壁③ 主観の壁

さらに厄介なのが、この壁です。

外観検査は本質的に主観を含みます。

例えば、

  • このキズはOKか?
  • この汚れはNGか?
  • この色ムラは許容範囲か?

こうした判断は、人によって変わります。

つまり、

  • 判定基準が曖昧
  • 人によって判断が違う
  • ゴールそのものが固定できない

という問題があります。

将棋やチェスのように明確な正解がある世界ではありません。

そもそも正解が揺れ続けるのです。


だから「無理ゲー」

コストは厳しい。

対象はバラバラ。

正解も曖昧。

冷静に考えると、

これで簡単に自動化できるはずがありません。

外観検査自動化が難しいのは、

画像処理が難しいからでも、
AIが未熟だからでもありません。

テーマそのものが難しい。

だから私は、

外観検査自動化は構造的に「無理ゲー」だと思っています。


そして「くそゲー」

さらに厳しいのは、

苦労の割に投資対効果が伸びにくいことです。

毎回違う。

毎回調整が必要。

毎回ノウハウがリセットされる。

これではエンジニアが疲弊します。

だから私は時々、

外観検査自動化は「くそゲー」だと言います。

もちろん愛情を込めてですが(笑)。


それでもやる理由

では、なぜ続けるのか。

理由は簡単です。

現場は困っているからです。

人手不足は加速しています。

熟練検査員も減っています。

そして品質要求はますます厳しくなっています。

つまり、

外観検査自動化は難しい。

でも、やらなければならない。


勝ち筋はどこにあるのか

私は最近、

個別案件を増やすことではなく、

実績を資産にすること

が重要だと考えています。

  • 毎回ゼロから作らない
  • ノウハウを共有する
  • 良品データを蓄積する
  • 改善が止まらない仕組みを作る

そうやって、

一品一様の世界の中に少しずつ共通部分を増やしていく。

そこにしか勝ち筋はありません。


外観検査自動化は、たしかに「無理ゲー」であり「くそゲー」です。

でも、だからこそ面白い。

そして、まだまだ改善できる余地があります。

私たちはこれからも、

現場で本当に使える外観検査を目指して挑戦を続けていきます。