確かに照明器は大事。でも・・・
FlexInspectorでは、定義することが難しい「欠陥」を検出するのではなく、定義しやすい「良品」を登録し「良品と異なるところ」を検出することを基本としています。
ここで考えたいのは照明器です。
「一般的」な照明器の選定方法は、ある欠陥サンプルに対し、欠陥部分のコントラストを上げることを第一の目標としています。ここでも「欠陥」基準の考え方です。そのため、「欠陥の種類の数だけ照明器の種類がある」に近い状態になっています。
FI流の考え方を持ち込むと、照明器の第一要件は「良品が安定して見えること」、第二要件は「欠陥が画像上で見えること」になり、照明器の選定基準が大きく変わります。
改めて考えてみると、欠陥のコントラストを上げるという事は、わずかな変動(=欠陥)で画像に大きな変化を生じさせるということであり、「良品が安定して見えること」と相反することになります。一方で、既存の画像処理アルゴリズムで主流の「固定二値化処理」は「良品が安定して見えること」を期待しているアルゴリズムであり、「照明」と「アルゴリズム」のマッチングに問題があると思います。このような欠陥のコントラストを上げる照明器には「動的二値化処理」など変動に追従可能なアルゴリズムを組み合わせるべきです。
一方で「良品が安定して見える」照明器は何かといえば、観察ポイントに対しあらゆる方向から照射されている無影状態を作り出せる照明器です。たとえば「同軸付きドーム照明」です。この照明器を用いて撮像した画像は、室内光で普通に観察した画像に近いものになり、多少観察方向が変わっても明るさに大きな変動は伴いません。
ただこの照明の弱点は、傷などの立体欠陥が見難いことです。目視でも照明との位置関係でようやく見えるタイプの欠陥です。このタイプは指向性の強い同軸光を照射します。ただこの方法は「不安定」であるため、変動に追従可能なアルゴリズムと組み合わせる必要があります。
結局、
- 一般室内光による目視検査=同軸付きドーム照明+良品比較アルゴリズム
- 角度を変えながらの目視検査=同軸照明+動的二値化など輝度変動に追従可能なアルゴリズム
の二種類を押えておけば、かなりの部分をカバーできるようです。
あと1点補足しておきたいことはTVのCMでも言っていたのですが「暗いところでは視力も低下する」ということ。欠陥のコントラストを上げるには単純に明るくすることが一番です。指向性が弱くて光量が多い蛍光灯というのは実は非常に良い選択です。
確かに照明器は大事です。でも照明器単体で論じることは意味が無く、照明方法に適したアルゴリズムと組み合わせることが重要です。
補足.FIには「良品比較アルゴリズム」に加え「輝度変動に追従可能なアルゴリズム」も搭載してあります。