名ばかり業務提携のすすめ ~外観検査エンジニアの協同組合という考え方~
外観検査の自動化に長く携わっていると、よく聞く話があります。
「もっと組織化すれば売上が伸びる」
「人を増やせば事業が拡大する」
「資本を入れれば解決できる」
もちろん一般論としては正しいのかもしれません。
しかし、外観検査の自動化という仕事は、少し事情が違います。
外観検査は「小さな案件」の積み重ね
外観検査のテーマは、一見大きな設備案件に見えても、その中身は非常に個別性が高い仕事です。
- ワークが違う
- 不良が違う
- 品質基準が違う
- 現場環境が違う
つまり、一つひとつがオーダーメイドです。
そのため、
- 画像処理
- 光学
- 照明
- メカ
- PLC
- 品質保証
などの知識を総動員しながら、お客様と一緒に答えを探していくことになります。
結果として、案件を最も効率よく進められるのは、多くの場合1~2名のエンジニアです。
人数を増やせば速くなるわけではありません。
むしろ、
- 情報共有
- 引き継ぎ
- 調整
が増え、効率が落ちることも少なくありません。
属人化は悪なのか?
一般的には、
「属人化は悪」
と言われます。
しかし外観検査の世界では、属人化そのものを完全になくすことは現実的ではありません。
なぜなら、お客様が求めているのは、
「誰でもできる仕事」
ではなく、
「経験のある人が解決できる仕事」
だからです。
問題は属人化ではありません。
本当に問題なのは、
孤立化
です。
業界には優秀なエンジニアがたくさんいる
展示会やセミナーで旧知のエンジニアと再会するたびに思います。
この業界には本当に優秀な人がたくさんいます。
しかし、
- 会社が違う
- 地域が違う
- 守秘義務がある
という理由で、それぞれがバラバラに活動しています。
結果として、
同じような失敗を繰り返し、
同じような課題に悩み、
同じような苦労をしています。
これは非常にもったいないことです。
「名ばかり業務提携」という発想
そこで考えているのが、
名ばかり業務提携
です。
名前だけ聞くと少し怪しく聞こえるかもしれません(笑)。
しかし実際には、
- 会費なし
- ノルマなし
- 上下関係なし
- 無理な共同受注なし
そんなゆるい関係です。
困った時に、
「誰か経験ありませんか?」
と相談できる。
忙しい時に、
「少し助けてもらえませんか?」
と言える。
それだけでも価値があります。
自分の食い扶持は自分で稼ぐ
この考え方の前提は、
誰かに仕事を与えてもらうことではありません。
それぞれが、
自分の顧客を持ち、
自分の仕事を持ち、
自分で稼ぐ。
その上で、
困った時には助け合う。
これなら独立性を失わずに済みます。
そして、
「もし自分が倒れたらどうなるのか」
という不安も小さくなります。
ユーザーにとっても大きなメリット
実は、この仕組みはエンジニアだけでなく、ユーザーにもメリットがあります。
外観検査設備は、
導入して終わりではありません。
- 品種追加
- 設備更新
- OS更新
- カメラ廃番
- 品質基準変更
など、10年、20年と付き合うことになります。
その時、ユーザーが本当に心配しているのは、
設備の故障ではなく、
「担当者がいなくなること」
だったりします。
もし一人の技術者だけに依存していると、
- 退職
- 廃業
- 病気
が大きなリスクになります。
しかし、複数の技術者が緩やかにつながっていれば、
万が一の時もバックアップできます。
ユーザーにとっての安心感は大きく変わります。
目指したいのは「エンジニアの協同組合」
私たちが考えているのは、
大企業を作ることではありません。
大量採用をすることでもありません。
目指したいのは、
強い個人が緩やかにつながる仕組み
です。
農業でいう農協のようなものかもしれません。
それぞれが独立して活動しながら、
必要な時だけ力を合わせる。
そんな形です。
外観検査の自動化は、本質的に一品一様の世界です。
だからこそ、
組織を大きくすることよりも、
経験を共有し、
実績を資産にし、
孤立しない仕組みを作ることが重要だと考えています。
まずは「名ばかり業務提携」から。
そんな小さな一歩が、外観検査業界の未来を少し面白くするのではないかと思っています。


